昨年の7月に長野県の妻籠宿へ行き、その日記で「雪化粧した妻籠も見てみたいものだ」と書いた。その願いを達成するため、2回目の妻籠旅行に出た。2月14日は妻籠宿で年に一度開催されるアイスキャンドル祭の日。ちょうどいいのでこの日を選んだ。そして今回泊まる宿は前回と同じ、若くて美人な女将さんがいる民宿「まるや」である。
だが、14日は朝からまったく起きれず、目がさめたのは昼過ぎだった。東京駅から妻籠まで4時間はかかる。少なくとも18時には宿に着いてご飯を頂かなければならない。そうすると14時には東京駅にいなければいけないが、もはや無理である。とにかくかなりバタバタ準備して家を出た。
まず東京駅から新幹線で名古屋駅まで向かい、そこから特急しなので南木曽駅を目指す。名古屋駅の時点で18時。宿に遅れる連絡をした。かなり申し訳なかった。
南木曽駅に到着したのが19時半。宿でご飯が待っていることを考えると、一刻も早く宿へ向かうべきだが、妻籠の街道にアイスキャンドルが照らされるのはこの日限りだ。街道を見ずに宿に行っては、なんのために妻籠へ来たのかわからなくなってしまう。と、南木曽駅で乗ったタクシーの中で悩んでいたところ、運ちゃんが「一瞬だけ街道を見てきたら?私、待ってますから」と言ってくれて、近くに車を付けてくれた。
10分だけアイスキャンドルの照らす街並みを見て回った。想像を大きく超えた絶景だった。これだけでも本当に来てよかったと思える景色だった。





20時に宿へ着き、お詫びをしてご飯を食べた。あいかわらずご飯が美味い。前回は相席で外国人がいたが、この時は僕1人で食べた。遅かったから当然だろう。ほかに宿泊している者が見えたので、先に食べたようだ。
それから風呂に入って、寝るまで布団の中で川端康成の抒情歌を読んだ。川端康成を読むと、なにか寂しいのに朗らかな気持ちになる。そうして1時には寝た。

翌日は8時から朝食だった。昨日は会わない宿泊客もいた。若い夫婦で、今回の宿泊客は彼らと僕の2組だけ。彼らは千葉から来たとのことだった。奥様は「この民宿の部屋は、外との仕切りが障子1枚だけなのに、思いのほか寒くなかったことに驚いた。昔の日本の家ってすごいですね」と驚いていたふうだった(書いていてわかりづらいが、この民宿は部屋と外との間にガラス戸などがあるわけではなく、あるのは障子だけである。障子の向こうには縁側しかない。この時期の長野県は雪が背高く積もるほど寒く、妻籠も例外ではない。それでもある程度断熱されて、部屋の中は暖かいのだ)。
僕は、今日は長野市の善光寺に行こうと考えていたので、早々に宿を出発することにした。夫婦に「お先に」と挨拶した後、女将さんに出発すると伝えた。女将さんは相変わらず美人だった。この人の笑顔を見ると、これまた朗らかな気持ちになる。発つのが名残惜しく感じた。