大峡谷

4時45分のアラームで起きた。今日は朝早くから現地ツアーに合流して、グランドキャニオンに行くことになっている。シャワーを浴び、6時には部屋を出てチェックアウト。売店でリプトン・グリーンティーというペットボトル飲料を3ドルで買った。グリーンティーというから緑茶かと思ったが、シトラスフレーバーのなにやらよくわからない味だった。

集合場所には他に3人が集まっていた。1人は33歳の男、あとの2人は1人が僕と同い年の男、そしてその母親だった(この同い年の男はM君と言って、気さくに話しかけてくれる好青年だった。この日連絡先を交換して、帰国した後にも2人で東京で飲んだりした)。ほどなくして迎えのバスがやって来て、僕達4人はそれに乗り込んだ。各ホテルに集まった人達がこのバスに回収され、グランドキャニオンを目指す。ツアー客は総勢50人はいるらしかった。僕は1人で参加しているというおっさんの隣に座った。

バスはキングマン、セリグマンという町でトイレ休憩を挟みながら、グランドキャニオン最寄りのツサヤンという町まで行く。ラスベガス→キングマンまで1時間半、キングマン→セリグマンまで2時間。そしてセリグマン→ツサヤンまで2時間だったので、グランドキャニオンまでの道のりがいかに大変なものかわかるだろう。町と町の間は、なにもない広大な荒野に一本のハイウェイが走っているだけである。いかにもカリフォルニアらしい風景が広がっていた。が、朝が早かったこともあって、道中は爆睡していた。

ツサヤンに着いたのは12時。昼飯時である。ツサヤンのレストランで昼食が用意されていた。バスで僕の隣だったおっさん、後ろの席にいた2人組の男と4人で飯を食べた。おっさんは銃を撃ちにアメリカに来たらしく、あとの2人は学生時代の友人で、26歳だと言っていた。

昼食を食べ終わると、いよいよグランドキャニオンへ。

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一面に広がる風景は、なにか写真のようだった。写真を見ているようで、なにも言えなかった。地球が気が遠くなるほど長い時間をかけて作り出した風景だ。圧巻である。確かに凄い。凄いのだが‥どうしても、写真を見ているような気分になった。僕はグランドキャニオンの写真を何度も目にしたことがあるが、正直言ってそれとの違いがあまり見出だせなかった。「実物はもっと凄かった!」という気分にはならなかった、というのが率直な感想である。素晴らしい風景なのは、確かだが。

2時間ほどあちこちの鑑賞ポイントを見て回った。途中、ほかの外国人観光客やM君に、グランドキャニオンをバックに僕の写真を撮ってもらったりした。僕は笑顔を作るのが苦手で、どうしても無愛想な表情を取ってしまうのだが、写真を撮ってもらった後、通りがかりのおばさんに「Smile!」とダメ出しされてしまった。

15時から帰路へ。再びツサヤン→セリグマン→キングマン→ラスベガスと、5時間の長旅が始まった。僕はあいかわらずおっさんの隣で寝ていた。

20時にようやくラスベガスに着き、僕はルクソールの前で降ろしてもらった。今日はルクソールの隣にあるホテル「エクスカリバー」に泊まる予定だった。すると、朝の集合場所にもいた33歳の男もルクソールで降りたので、少し話をした。彼は銀行員で長い間激務が続いていたが、ここ数日まとまった休みが取れたので、ニューヨークやラスベガスを旅行しているとのこと。昨日僕が行くのを断念したベラジオの噴水ショーも見に行ったと言っていた。見るのは無料だし、見る価値は十分だ、と。そこまで言われると、ベラジオに行かないわけにはいかないではないか。

ベラジオに行く前に、エクスカリバーのチェックインを済ませることにした。昨日のルクソールでのチェックインと話すことは同じ。手続きはスムーズに終わり、僕は荷物を部屋に置いて、再びホテルの外に出た。

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ラスベガスの夜は暑い。きっと25度とか30度はあったのではないかと思う。しかし湿気がまったくなくカラッとしているので、まるで汗をかかない。日本にいる時に感じるのとは違う、不思議な暑さだった。この暑さなら多少歩いても疲れない。

エクスカリバーから30分ほど歩くとベラジオが見えてくる。ベラジオはラスベガスの中でも有数の高級ホテルで、ルクソールやエクスカリバーの数倍の宿泊料がかかる。ベラジオの真正面に大きな池があり、これに備え付けられた噴水でショーが行われる。このショーは無料で見ることができるので、池の回りは見物客で溢れていた。

池の前にはコスプレイヤー達も集まっている。実は彼らは、行き交う人と記念写真を撮った見返りに高い撮影料を請求してくるのである。そんな手口を知らず、僕はついピカチュウのきぐるみをカメラで撮ってしまった。するとピカチュウとコンビを組んでいるもう一人のスーパーマン風の男が「写真撮ってやるよ!」と言ってきて、ついついカメラを渡した。男は「What’s your name!?」「You’re サムライ!」などとおだててくる。僕もノッてきて気分良くしていると、なんと男は「pay money…」とドル札を見せてくるではないか。20ドル札を見せてくるあたり、20ドル払えということだろう。しかし「侍」だと言われた手前、断るわけにもいかず、20ドル札を差し出した。これで終わりかと思いきや、今度はピカチュウが金を寄こせと言ってくる。さすがに頭にきて、5ドル札をピカチュウの口に突っ込んでその場を後にした。まったくいい勉強になった。

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ベラジオの噴水ショーは15分おきに、1回あたり3~4分行われる。僕は21時45分・22時・22時15分の3回を見た。どれも曲と演出が違い、迫力があって息を呑む。これは見に来てよかった。

せっかくベラジオに来たので、ベラジオのバフェで食事をしようと思いついた。しかしバフェは22時までとのことで、諦めて退散することにした。ベラジオの中に入ったついでにいろいろと見て回ったが、やはり高級ホテルの風格のようなものを感じる。レストランにはピアノが置かれ、ピアノマンが静かに曲を弾いていた。単にCDを掛けるのとピアノマンが演奏するのとでは、違った雰囲気が醸し出されるようだ。また、カジノに来ている客にも品格が漂っていたように思う。確かにベラジオとルクソールやエクスカリバーでは、宿泊者の層に大きな違いがあるので、当然ではあるが‥

夜も大分遅くなってしまったので、エクスカリバーに戻ることにした。途中、「CVS PHARMACY」というスーパーがあったので、そこでピタというサンドイッチのようなものとコロナ・ペリエを買った。寂しい夕食だが、ピカチュウ達に金をせびられてしまったのでしかたがない。

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0時にシャワーを浴び、そろそろ寝るかとも考えたが、どうも昨日のルーレットの興奮が忘れられない。せっかくラスベガスに来たのだ。カジノで遊んだのが1日ではもったいない。そう思って、ついにエクスカリバーのカジノへ繰り出した。0時を過ぎたとはいえ、ここは眠らない街のカジノだ。いまだに多くの客が賭けに興じている。昨日の100ドルを取り返すのだ‥僕は意気込んで、再びルーレットのテーブルに座った。

ほかに2人の男が座っていて、3人で長い時間プレーした。僕はあいかわらず赤か黒か作戦でベットしていた。いったんは昨日のマイナスを取り戻すほどにまで勝ったが、ジリジリと負け始めて、結局この日も100ドルのマイナスになってしまった。2日で200ドルの負け。所持金の1/3以上を持って行かれたことになる。しかし僕はカジノで思う存分遊ぶことができた満足感でいっぱいだった。清々しい気持ちで、ディーラーのお姉さんにチップを渡して席を立った。時計は2時を指していた。

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