イトシマオをもてなして

GOが会社の研修で6日間ほど東京に滞在することになった。そこで1月28・29日の土日は「東京のどんなランドマークにもある程度行ったことがある」というGOをもてなす、「晩白柚東京ツアー」を行った。

●1月28日(土)

朝10時、品川駅に集合。築地市場へ移動して、まずは腹ごしらえである。築地市場で海鮮モノを食べては面白くない。築地はカレーもうまいという話を聞いていた僕は、GOを連れてカレー屋「中栄(なかえい)」に足を踏み入れた。

ここのカレーは合いがけ(ハーフ&ハーフ)で食べるのが通のようだ。僕とGOはビーフカレーとインドカレーの合いがけを注文した。

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市場のカレーを侮るなかれ、コクがあってとてもうまい。ボリュームも満点で大満足だ。店を出て一服し、Hは「さっそくいいもん食った‥」と呟いた。

ついでに市場の中を散策する。市場の朝は早い。10時も過ぎれば市場の方々の仕事もひと段落したように見える。

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築地市場を出て浅草へ。僕とHが好きな漫画「孤独のグルメ」に登場する甘味処「梅むら」があるのだ。

浅草寺の雷門前はいつもと変わらない人の多さである。寺を抜けて北に5分ほど歩くと甘味処「梅むら」はある。

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孤独のグルメの主人公・井之頭五郎は「梅むら」で煮込み雑炊を注文しようとするが、それが来月からのメニューと知って、代わりに「豆かん」をお願いする。その例に漏れず僕達も豆かんを注文した。豆かんは黒豆と寒天に黒蜜がかかったシンプルな甘味である。さっぱりとした甘みがあった。

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甘味を堪能したあとは浅草演芸ホールで寄席を観ることに。ホールの中は満員で、僕達はホールの脇で立ち見した。落語初心者に寄席はハードルが高い・観ても面白くないという話も聞く。しかし意外と面白いねと言い合った。どれも創作落語で、どの落語家だったか、父親が子供にトンチンカンな英語教育をするという噺をして、おはぎを表して発せられた「ナカメシコロモアーン」というフレーズに2人でハマってしまった。

梅むらから浅草演芸ホールへ続く道に「ホッピー通り」なる居酒屋が連なった通りがある。「お兄さん、ちょっと飲んでって!」とあちこちで女将の呼ぶ声が聞こえる。そのエネルギーに溢れた界隈に圧倒されたGOは「ここで飲んでみたいな‥」と言った。僕の予定では、寄席のあとは国立科学博物館へ行くことになっていたが、たしかにこのホッピー通りには以前から興味を惹かれていた。そうとあればここで飲んでいくかという話になった。

適当に目をつけた店に入り、ホルモン、牛スジ、マグロのぶつ切り、そしてホッピーをやりながら2人で話をした。ここでした話が、2日間の中でいちばん印象深く、面白かったと思う。しかし、この店のホッピーの”中”の質がかなり悪く、そのうえグラスにたっぷり注がれてくるので、僕は少し気分が悪くなってしまった。

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少し休憩することにして、神保町の喫茶店「さぼうる」へ。神保町にはレトロな喫茶店がいくつかあって、前に檸檬と「ミロンガ・ヌオーバ」へ行ったのを思い出した。「さぼうる」は特に人気の高い老舗で、30分は待たされた。

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コーヒーとミックストーストを注文。ここのミックストーストは死ぬほどうまい。狭い席に通されたがそれを申し訳なく思ったらしく、マスターのイチロウさんからバニラアイスの差し入れがあった。粋なはからいに感謝である。

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すっかり日が暮れて20時になった。この日の最後は新宿ゴールデン街で〆ることにしていた。小ぢんまりとした店が雑多にひしめき合う、カオスと言うに相応しい飲み屋街だ。GOの好き(だったはず)なドラマ「深夜食堂」の舞台のモデルでもある。この街の雰囲気はぜひ彼に味わってほしかった。

界隈を歩き回り「すげぇ街だ」とGOが言う。雰囲気の良さそうな店に入り、ちょっとした小料理と焼酎をもらった。

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店の真ん中に囲炉裏がある、オツな雰囲気の店だった。しかしこの時、ホッピー通りのホッピーが着実に僕の腹をえぐり続けていて、ついに我慢できなくなり、Hを置いて外に出た。吉本の前のファミマに入り、トイレで盛大に吐いた。

時間は22時半を過ぎていた。「晩白柚東京ツアー」は明日も続く。この夜はゆっくり休んでもらうことにして、新宿駅で解散した。

●1月29日(日)

11時過ぎ、新宿駅集合。この日もカレーの腹ごしらえで始まる。新宿のカレー屋といえばここしかない。新宿3丁目の「草枕」だ。

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玉ねぎをふんだんに使ったカレーである。GOは「こんなカレーがあったなんて‥」と驚愕していた。この日のGOは店を出たあとも「昼のカレーの味が忘れられん」と呟いていた。

お笑い好きの我々である。昨日に続き、ルミネtheよしもとで漫才を見ることにした。タカアンドトシ・千鳥・ダイノジ・キングコングなどが出演した。生で見る漫才はテレビと違った臨場感があって良い。僕はフットボールアワーがいちばん面白かった。

ルミネを出、昨日行くことができなかった国立科学博物館へ。巨大な恐竜の化石やシロナガスクジラの模型など、大きな構造物を見ることをGOは好きらしく(不気味に思えて僕は好きではない)なかなか楽しんでくれたようだ。17時閉館で、1時間半しか見て回ることができなかったのが残念だった。

昨日に引き続き浅草へ移動して、GOが行ったことがあるという「神谷バー」を訪れた。ここは明治時代にブランデーベースのカクテル「電気ブラン」を初めて出した店として有名だ。メニューには「デンキブラン」と「電気ブラン(オールド)」がある。

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こちらが最初に注文した「デンキブラン」、アルコール度数は30度。

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そしてこれが「電気ブラン(オールド)」。アルコール度数は40度になる。その度数はさすが、舌が痺れるほどである。

電気ブランで気持ちよく酔った我々は、休憩がてら喫茶店に入ることに。浅草にもレトロな喫茶店がある。池波正太郎や手塚治虫がこよなく愛したという「アンヂェラス」がそれである。

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ダッチコーヒー(水出しコーヒー)と、バタークリームを使ったケーキ「アンヂェラス」を頂いた。

「最後に背脂がたっぷり入ったラーメンが食べたい‥」とGOが言った。彼が探し出した背脂チャッチャ系のラーメン屋「弁慶」へ足を運んだ。

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ここのラーメンはこれでもかというほど背脂がチャッチャされていた。丼ぶりの外側にまで背脂が飛んできている。こんなにパンチの効いたラーメンを食べるのは久々だった。体の中から脂まみれになる心地であった。

浅草から銀座線で上野へ。GOは京浜東北線で品川へ戻るので、ここでお別れ。「晩白柚東京ツアー」もいよいよ終わりである。「おつかれでした」と、握手をして別れた。

こうやって腰を据えて東京巡りをしたのは僕自身初めてだった。東京タワーやスカイツリーをはじめとした主要なランドマークを避けて、僕の趣味を全開にしたおもてなしルートを考えるのは楽しかった。GOの中に数ある東京の思い出の中で、この2日間が特別なものとなってくれたのなら、僕は冥利に尽きると思う。

2件のコメント

  1. 先日は大変お世話になりました。お陰でディープな東京を堪能できました。文字にするとナカメシコロモアーンの面白さが薄れてしまって残念ですね。カレーの味とともに心の中にしまっておきましょう。

  2. 大変遅くなりましたが、先日はありがとうございました。いつか僕も福岡に再訪しますので、僕の知らないディープな福岡を案内してくれるとありがたいです。

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