半年ぶりに檸檬とキャンプに行った。
場所は埼玉県飯能市。都内から車で2時間ほどである。前回に続き今回もレンタカーを借りた。朝から小雨がぱらついていたが、飯能に近づいたあたりから本格的に降り始めた。
キャンプサイトの設営はかなり大変だった。檸檬はどこかで安く買った、アウトドアには似合わない透明の雨合羽を着ていた。ペグを打つハンマーが雨で滑り、どこかへ飛んでいきそうになった。
我がテント・ローリーポーリー、そしてタープ・ムササビウィングの設営をひと通り終えて、やあやあ待っていましたよと言わんばかりにふたりでハイネケンの栓を開けた。外で飲む瓶ビールはなぜこうも美味いのだろう。
雨に濡れて身震いしていた我々はさっそく焚き火を始め、その上にスキレットを置いてピザ・アヒージョ・餃子などを楽しんだ。GOとキャンプをする時もそうだが、僕は調理にあまり明るくないので、道具の準備や手入れに徹する。
この日の炊事班長は檸檬であった。
檸檬はざくざくと野菜を切り、淡々と塩こしょうで味を整えてオリーブオイルを注ぐ。班長特製のアヒージョだ。が、僕の調達してきたオリーブオイルの量が圧倒的に足りず、なかば野菜のオリーブオイル炒めになってしまった。
キャンプに来たら必ず行う、唯一僕主導の料理(と言えるのか?)に燻製がある。熱燻は温度調整にかなり敏感にならなければならず、温度計をヒヤヒヤして見ることになる。案の定、1回目は3段目のミックスナッツが黒い煙を上げて炎上。しかし2回目はうまくいって、サクラの風味が豊かなししゃもが完成して一同歓喜の声が上がった。
飽きることなく2人は飲み続け、瞬く間に空き缶が並んだ。酩酊しながら2人の調理は続く。最後のミッションはパエリアだった。が、酔った我々に正常な調理ができるはずがない。水に戻したサフランを盛大にこぼす檸檬。炒めた鶏肉をすべて地面に落とす晩白柚。最後の料理は散々であった。それでも、残った材料で作ったパエリアに思わず「うまい!」と叫んだのを覚えているから、野外で作る料理にはやはり格別の魅力があるのだ。
翌日はコーヒーと、少しのパン・ウインナーで済ませた。僕は前日から薬を飲むのを忘れていて、二日酔いも相まって急に体調が悪くなり、一言も喋れなくなった。帰りはすべて檸檬に運転してもらった。車中、僕の震える吐息が聞こえてきて、尋常ではなかったと彼が言っていた。キャンプ終わりの気だるさの中、運転を任され、隣の男は死にそうになっている。彼には申し訳なかった。
今回、僕のものと同じスノーピークのシングルチタンマグを檸檬にプレゼントした。関東で彼とキャンプに行ったのは2回だけだが、その思い出を忘れないでほしい。そして彼が九州に帰った時は、そのマグを持ってまたキャンプに来てほしい‥。